認知行動療法センター

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児童・青年に対する認知行動療法の統一プロトコル

児童・青年に対する認知行動療法の統一プロトコル

認知行動療法センターでは、“児童の感情障害に対する統一プロトコル(Unified Protocol for the Treatment of Emotional Disorders in Children:UP-C)”と“青年の感情障害に対する統一プロトコル(Unified protocol for the Treatment of Emotional Disorders in Adolescents:UP-A)”の臨床研究を進めております。UP-CおよびUP-Aは、Barlow博士らが開発した統一プロトコルをEhrenreich-May博士らが児童・青年用に改変したものです。

ここでは、UP-CおよびUP-Aについて簡単にご紹介させていただきます。

 

どんな治療なのでしょうか?

UP-C、UP-Aはともに、感情に焦点を当てた診断横断的な認知行動療法です。児童・青年の感情障害を維持させる共通要素(主にネガティブ感情に対する不適応的な調整方略)を治療のターゲットとします。

 

どのような方が対象なのでしょうか?

 UP-CおよびUP-Aの対象は、感情にまつわる困難が顕著な障害、すなわち感情障害です。DSM-5で言えば、UP-C、UP-Aの対象として以下の障害や状態が含まれます。

 なお、UP-Cは6~13歳、UP-Aは12歳以上を対象としています。

 

抑うつ障害群:

 ・うつ病/大うつ病性障害

 ・持続性抑うつ障害(気分変調症)

不安症群/不安障害群:

 ・分離不安症/分離不安障害

 ・限局性恐怖症

 ・社交不安症/社交不安障害(社交恐怖)

 ・パニック症/パニック障害

 ・広場恐怖症

 ・全般不安症/全般性不安障害

強迫症/強迫性障害

適応障害

上記障害の合併症

上記障害の閾値下の診断

 

何をするのでしょうか?

UP-C

1.治療の枠組み

 一回90分のセッションを毎週、計15回実施します。セッションは、グループ形式で、子どもグループとその保護者のグループを並行して行います。一回のセッションの基本構造は、①全員で前回のホームワークとスキルを振り返る、②子どもグループと保護者グループにわかれる、③全員で次回のホームワークを確認する、となっています。治療は、CLUESスキルと呼ばれる以下の5つのスキルに基づいて行われます。

 

2.CLUESスキル

C:Consider how I feel(感情への気づき)

最初に、感情についての心理教育を行います。ここでは、感情体験を思考、身体感覚、行動の3要素に分ける練習を行います。加えて、身体感覚に対する気づきを高めるエクササイズや、気分と活動との関係を学ぶための行動実験を行います。

 

L:Look at my thoughts(認知評価)

柔軟な思考や、思考の落とし穴について紹介します。ネガティブな感情が喚起される状況で、可能性のある評価を複数生み出す重要性を強調します。

 

U:Use detective thinking(認知再評価)

曖昧な状況に対して柔軟に考え、思考の落とし穴に異議を唱える練習を行います。大切なのは、最初の思考を否定することではなく、他の見方が正しい可能性を探ることです。加えて、問題解決や葛藤管理の技法について紹介します。

 

E:Experience my fears and feelings(感情曝露)

感情体験に対する気づきを高めるために、マインドフルネスエクササイズを行います。グループ全体で行う全般感情曝露からはじめ、内部感覚曝露、階層表を基にした段階的な現実曝露へと取り組んでいきます。ここでは、回避しないことと、新たな行動をとることが重視されます。

 

S:Stay healthy and happy(再発予防)

治療を通して学んだスキル、達成したことと今後の課題について振り返ります。最後に、全員で治療の終結を祝います

 

UP-A

1.治療の枠組み

 一回50分程度のセッションを毎週実施し、合計で平均16回行います。セッションは、基本的に1対1の個人療法として実施されます。UP-Aは、以下の8つの中核モジュールと2つの任意のモジュール(困難に対処するためのモジュール、親用のモジュール)からなります。

 

2.中核モジュール

モジュール1:導入と動機づけ

  変わりたい気持ちと治療を受けることに対するためらいが葛藤することはよくあることです。治療目標を設定するとともに、変わること・変わらないことのメリット・デメリットについて検討することを通して、治療への動機づけを高めます。

 

モジュール2:感情と行動への気づき

  感情についての心理教育を行い、感情体験が身体感覚、思考、行動の3要素に分けられることについて説明します。また、学習された行動について紹介します。そして、3要素とその前後、つまりきっかけと結果について同定する練習をします。

 

モジュール3:行動活性化

  感情体験の3要素のうち、行動に焦点を当てます。行動活性化について学び、楽しい活動のリストを作成して取り組みます。活動と気分との関連性について学ぶことが重要です。

 

モジュール4:身体感覚への気づき

  感情体験の3要素のうち、身体感覚に焦点を当てます。不快な感情を感じているときの身体感覚を同定します。また、内部感覚曝露を行います。

 

モジュール5:思考の柔軟性

  感情体験の3要素のうち、思考に焦点を当てます。錯視図形などを用いて、自動評価と再評価について説明します。また、思考の落とし穴と、思考の落とし穴から抜け出すための方法について紹介し、練習します。併せて、問題解決技法についても説明します。

 

モジュール6:感情体験の非断定的な気づき

  現在焦点の非断定的な気づきを練習するために、マインドフルネスエクササイズを行います。また、全般感情曝露に取り組みます。

 

モジュール7:状況曝露

  ここまで学んできたスキルについて振り返ります。これらのスキルを総動員し、階層表に基づいた段階的な状況曝露に取り組みます。

 

モジュール8:達成の確認と再発予防

  治療を通して学んだスキルと達成したことについて振り返ります。また、今後の課題について検討し、将来に向けた計画を立てます。

                             

参考となる論文

Ehrenreich-May, J., & Bilek, E. L. (2012). The Development of a Transdiagnostic, Cognitive Behavioral Group Intervention for Childhood Anxiety Disorders and Co-Occurring Depression Symptoms. Cognitive and Behavioral Practice, 19(1), 41-55.

 

Seager, I., Rowley, A., & Ehrenreich-May, J. (2014). Targeting Common Factors Across Anxiety and Depression Using the Unified Protocol for the Treatment of Emotional Disorders in Adolescents. Journal of Rational-Emotive & Cognitive-Behavior Therapy, 32(1), 67-83.

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