認知行動療法センター

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パーキンソン病に対する認知行動療法

パーキンソン病とは?

パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)は、振顫、無動、固着などの運動症状を中核とする神経変性疾患で、我が国には15〜17万人の患者の方がいると言われています(厚生労働省, 2007)。PDはこのような運動症状を中核としますが、最近ではうつや不安といった精神症状も伴う疾患として理解されるようになってきました。中でも、うつは運動症状治療やリハビリテーションの妨げとなり、QOLの低下と予後の悪化にも関係すると言われています(Global Parkinson's Disease Survey Steering Committee, 2001)。さらに、PDのうつは一般的なうつとは異なり、不安が顕著で、特にwearing-off(薬剤性の無動症状)の際に起こりやすい傾向にあります。また、運動症状との重複から患者の方ご自身、介護者、医療者が気づきにくいという特徴もあります。このような不安を伴ううつは、自律神経系を刺激して身体症状を増悪させたり、抗パーキンソン病薬の効果に悪影響をもたらすため、精神症状に対するケアの確立が求められています。
 

パーキンソン病の認知行動療法

海外では、パーキンソン病患者の方の精神症状に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy, CBT)の効果を報告しているが調査が存在します。米国のDobkinらは、10週の認知行動療法と臨床監察との比較を無作為化割り付け試験(Randomized controlled trial, RCT)を行い、CBTがハミルトンうつ評価尺度(HAMD)において有意な改善を示したことを報告しています(Dobkin, 2011)。しかしながら、このような調査報告は、国内外問わず数が不足している現状にあります。私たちは平成23年度から、パーキンソン病の患者の方向けの認知行動療法プログラムを開発し、その効果と安全性を検証してきました。また、Dobkin博士との連携を開始し、直接コンサルテーションを受け、プログラムの改良も行いました。
PDのCBTでは、症状そのものを題材として取り扱いながら、症状の捉え方、症状を抱えながらも機能している側面を見つめ直し、役割を果たしたり、楽しみとなる活動を維持する方法を考えます。よくあるテーマとしては、外出や友人と会うことへの抵抗感、病気の受容や予後への不安、職場や家族との関わり方などが挙げられます。我々のCBTプログラムは、高齢の患者の方にも取り組みやすくするために、イラストを多用し、楽しく自分の心を見つめ直すことのできる内容となっています。現在、パイロット研究を終え、無作為化割り付け試験を実施しています。

 

CBTの内容

一回60分のセッションを合計8回実施し、パーキンソン病についての理解がある心理士が担当します。CBTテキストは無料で差し上げています。

 

セッション

内容

セッションの目的

セッション1

CBTモデルの教育

症状に関連した心の動きを4側面から捉える

セッション2

考えに気づく

うつ(不安)の維持している考えに関心を持つ

セッション3

違う視点を取り入れる

他の視点を練りだす練習をする

セッション4

さらなる練習

実生活の中で考えを見直す機会を持つ

セッション5

行動パターンを知る

自分の行動に関心を持つ

セッション6

行動を変える

気分を持ち上げる行動を試す

セッション7

行動を変える

不安に向き合う行動を試す

セッション8

今後に備える

これまでの取り組みを今後の生活に生かす

 

パーキンソン病の患者の方への認知行動療法は、以下のような方にお勧めです。

  • ちょっとしたことでも不安になる、気分が晴れないことがよくある
  • 誰かに気持ちを話したいけれど、家族や友人には話しにくい
  • 行動に移したいけれど、気分がどうも乗ってこない
  • 自分のこころの状態を詳しく知りたい

 

対象となられる方

  • 当院神経内科を受診している方
  • パーキンソン病の診断を有する方
  • GRIDハミルトンうつ評価尺度(HAMD)において13点以上(軽症)の方

参考となる論文

1. Dobkin RD MM, Allen LA, Gara MA, Mark MH, Tiu J, Bienfait K, Friedman J. Cognitive-Behavioral Therapy for Depression in Parkinson’s Disease: A Randomized, Controlled Trial. The American journal of psychiatry. 2011;168(10):1066-1074.

2. Dobkin RD, Troster AI, Rubino JT, et al. Neuropsychological outcomes after psychosocial intervention for depression in Parkinson's disease. The Journal of neuropsychiatry and clinical neurosciences. 2014;26(1):57-63.

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