認知行動療法センター

research

認知症患者の介護家族者に対する認知行動療法

認知症患者の介護家族者を取り巻く状況

厚生労働省の将来推計人口では、2025年には日常生活自立度Ⅱ以上の認知症患者は470万人に達すると推定されており、認知症患者の生活の質を高める取り組みが必須とされています。また、現在の日常生活自立度Ⅱ以上の認知症患者は280万人(平成22年9月末時点)ですが、うち約半数は居宅で介護が行われており、介護による身体的・精神的ストレスによって抑うつ、不安症状を呈する介護家族者も少なくありません。介護者の精神状態の悪化は時に認知症患者に対する不適切な対応や虐待にも繋がる場合もあり、認知症患者のBPSD (Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)症状にも影響するといわれています。そのため、介護家族者に対する精神的ケアを含めた包括的で効果的な支援が必要とされています。

 

介護家族者を対象とした認知行動療法に関する先行研究

介護家族者を対象とした心理的介入に関するシステマティックレビュー1)では、認知症患者の問題行動に焦点を当てたBehavioral management therapyや介護家族者のストレスに対するCoping strategiesを実施したところ、介護家族者の抑うつ症状の改善に効果があったことが報告されています。 

また、英国で実施された介護家族者に対する心理的介入に関する大規模無作為化比較試験2、3)では、Coping strategy program(START)を実施した群では、対照群と比較して介護家族者の抑うつ症状やQOLが有意に改善し、施設入居までの期間が延長したと報告しています。このプログラムは認知症や介護ストレスに関する心理教育、認知症高齢者の問題行動に対するマネジメントテクニック、認知再構成法、アサーティブコミュニケーション、アクセプタンス、行動活性化等で構成されており、認知行動療法の各技法が効果的に用いられています。

 

認知行動療法センターが提供するプログラム

認知行動療法センターでは、認知症患者の介護家族者を対象とした下記2つのプログラムを立案、実施しています。

 

①認知症患者の介護家族者に対する認知行動療法プログラム

認知症患者の介護家族者を対象とした疾病教育や心理教育と家族の交流会で構成したプログラムを2015年10月から開始しました。このプログラムの目的は、認知症や社会資源、ケアの仕方等に関する正しい知識を身につけるとともに、認知行動療法のスキルを学んで介護ストレスへのコーピング能力を高めることです。

 

1.対象

・20歳以上90歳未満の男女

・認知症と診断された親族と週4日以上、週10時間以上生活を共にする者

・日本語でのコミュニケーション(聞く・話す・書く・読む)に問題がない者

 

【除外基準】

・MMSEが23点以下の者

・統合失調症・物質使用障害・器質性精神障害の診断がされている者

・がんなどの疾患で余命が1年以内と申告されている者

・精神・身体疾患に対し入院治療が予定されている者

 

2.プログラム

・実施回数;水曜 10:00-11:30  月1回
・実施内容

認知症について

介護者のストレス

認知行動療法

社会資源の活用

認知症のケア

 

 

 

 

 

 

 

 

*各回とも前半は講義、後半は家族交流会で構成しています。

 

②抑うつ、不安症状を呈する認知症患者の介護家族者に対する認知行動療法プログラム

認知行動療法センターでは、介護によって抑うつ症状や不安症状を呈する介護家族者を対象とした個人療法としての認知行動療法プログラムの開発も予定しています。このプログラムは、英国 Coping strategy program(START)を参考に、日本人の特性や日本の認知症施策を踏まえたプログラム構成にする予定です。

【引用文献】

  1. Selwood A., Johnston K., Katona C. et. al: Systematic review of the effect of psychological interventions on family caregivers of people with dementia. J Affect Disord. 101. 75-89. 2007.
  2. Livingston G., Barber J., Rapaport P. et.al: Clinical effectiveness of a manual based coping strategy programme (START, STrAtegies for RelaTives) in promoting the mental health of carers of family members with dementia: pragmatic randomised controlled trial. BMJ. 347. f6276. 2013.
  3. Knapp M., King D., Romeo R. Cost effectiveness of a manual based coping strategy programme in promoting the mental health of family carers of people with dementia (the START (STrAtegies for RelaTives) study): a pragmatic randomised controlled trial. BMJ. 347. f6342. 2013.

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