認知行動療法センター

research

復職支援の認知行動療法プログラム

うつ病等休職者を取り巻く状況

わが国では、メンタルヘルス不調者は増加傾向にあります。全国の14,000事業場を対象に実施した厚生労働省の労働安全衛生調査1)では、メンタルヘルスの不調によって1か月以上休業または退職した労働者がいる事業場は全体の25.8%、1,000名以上の労働者を抱える大規模事業場では31.2%と報告しています。また、国家公務員長期疾病病休者実態調査2)では、長期休職者の総数は減少傾向にあるもののメンタルヘルスの不調による長期休職者は年々増加傾向にあり、総休職者の64.8%を占めると報告しています。

わが国では都市部を中心に、デイケア等の集団療法を活用した復職支援プログラム(リワークプログラム)が急速に展開されつつあります。しかし、職場復帰を目的としたリハビリテーションの場でどのようなプログラムが必要なのかについては、統一的な理解が得られているとは言えず、職場復帰の促進効果が期待できる標準的なプログラムの構築が求められています。

うつ病や適応障害による休職者の復職支援に関するコクランレビュー3,4,5)では、労働時間や仕事内容の調整、職場のサポート体制など直接的に労働条件や労働環境に働きかける介入と、抑うつ症状の軽減によって間接的に就労機能の改善を図る臨床的介入の2つの手法を紹介しており、臨床的介入としては、認知行動療法の介入効果が高いことを報告しています。

認知行動療法を活用した復職支援プログラム

2015年10月から、国立精神・神経医療研究センターでは精神科デイケアとしてうつ病等休職者を対象とした復職支援プログラムを開始しました。認知行動療法センターでは、プログラム開発や研究支援に当たっています。

 

1.対象者

  • 気分障害、不安障害、適応障害等の診断を受けて、外来通院をしていること
  • 現在、病気休暇または休職中であること
  • 職場に復帰したいという意欲があること
  • 参加に関して、主治医の了解を得ていること
  • 参加に関して、企業の人事または産業保健スタッフの了解を得ていること

 

2.実施形態

  • 費用;診療報酬(精神科デイケア)
  • 日時; 火・水・金 9:30~15:30

 

3.カリキュラム

プログラムを構成するカリキュラムは、新聞要約や課題研究などのオフィスワークに加えて、有酸素運動、うつや不安の疾病教育、認知行動療法やアサーショントレーニング、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)などで構成されます。これらのプログラムに参加することで、復職準備性を向上させて、復職後の再発予防へのセルフコーピング力を高めていきます。

 

4.復職時のコーディネート

本人や家族、産業保健スタッフや上司、医療機関のスタッフが連携して、復職後に再発せずに勤務を継続できる労働条件や労働環境を事前に話し合うコーディネート面談を実施します。また、週1回の個別面接を実施し、ご本人の体調や復職準備性をアセスメントしていきます。

5.【オプション】疾患に特化した認知行動療法プログラム

国立精神・神経医療研究センターや認知行動療法センターでは、パニック障害、強迫性障害、過敏性腸症候群、慢性疼痛など疾患に特化した認知行動療法プログラムを提供しています。これらの疾患を併存している患者に対しては、これらのプログラムを紹介することもできます。

 

復職支援プログラムに関する研究

休職中の症状や生活リズム、活動量等は本人の自己申告に依ることが多く、復職に対する不安や焦りから復職準備性を正しく評価することが難しいことも少なくありませんでした。認知行動療法センターでは、精神疾患により長期療養する労働者が早期に職場復帰を実現するために、ウェアラブル機器等を活用した先進技術による客観的・多角的な生物学的・心理社会的な検査法を開発する研究を実施予定です。

また、認知行動療法を活用した復職支援プログラムと就労支援(本人や家族、企業や医療機関のスタッフによるコーディネート面談等)を組み合わせた新しい復職支援プログラムのあり方を検討していきます。

さらに、中小企業に勤務する者は、勤労者全体の99.7%を占めるとも言われています。中小企業には、うつ病等休職者の復職をサポートする産業保健スタッフが在中していないことから、職場復帰に難儀することも多いという現状があります。そのため、認知行動療法センターでは、中小企業の労務管理を主に担うことが多い社会保険労務士との有機的な連携のあり方も研究していきます。

 

 

【引用文献】

1.独立行政法人労働政策研究・研修機構, 職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査,  2012.

2.人事院, 平成23年度国家公務員長期病休者実態調査結果の概要, 2013.

3.Arends I., Bruinvels D.J., Rebergen D.S., et al., Interventions to facilitate return to work in adults with adjustment disorders. Cochrane Database Syst Rev, Cd006389, 2012.

4.Nieuwenhuijsen K., Bultmann U., Neumeyer-Gromen A., et al., Interventions to improve occupational health in depressed people. Cochrane Database Syst Rev, Cd006237, 2008.

5.Nieuwenhuijsen K., Faber B., Verbeek J.H., et al., Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database Syst Rev, 12, Cd006237, 2014.

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