主な研究

青年の感情症に対する認知行動療法の統一プロトコル(UP-A)
2023-04-20 研究開発部

青年の感情症に対する認知行動療法の統一プロトコル

青年の感情症に対する認知行動療法の統一プロトコル

 
  • どんな治療なのでしょうか?
数多ある認知行動療法のプロトコルから、共通する技法や要素を抽出し、効果的にまとめたのがUnified Protocol for Transdiagnostic Treatment of Emotional Disorders in Adolescents(UP-A)です。UP-Aは、感情に焦点を当てた診断横断的な認知行動療法で、治療を通して、感情との付き合い方を学んでいきます。  
 
  • 何をするのでしょうか?
UP-Aの治療内容

UP-Aは、以下の8つの中核モジュールと任意の親用のモジュールからなります。
モジュール1:目標を立て、やる気を維持しよう!
変わりたい気持ちと治療を受けることに対するためらいが葛藤することはよくあることです。治療目標を設定するとともに、変わること・変わらないことのメリット・デメリットについて検討することを通して、治療への動機づけを高めます。
モジュール2:感情と行動について知ろう!
感情の役割と、感情体験が身体感覚、思考、行動の3要素に分けられることについて学びます。また、苦手な感情を避けようとすることで生じる悪循環についても学びます。そして、感情体験を、3要素とその前後、つまりきっかけと結果にわけて捉える練習をします。そうすることで、これまでぐちゃぐちゃでただ苦しかった感情が少し整理され、より扱いやすくなります。
モジュール3:行動実験をして感情の変化を確かめよう!
感情体験の3要素のうち、行動に焦点を当てます。行動活性化について学び、楽しい活動のリストを作成して取り組みます。活動と気分との関連性について学ぶことが重要です。
モジュール4:からだの感覚に気づこう!
感情体験の3要素のうち、身体感覚に焦点を当てます。不快な感情を感じているときの身体感覚に気づく練習をします。また、感覚実験を通して、身体感覚をどこかに追いやろうとせず、そのままに感じる練習をします。
モジュール5:柔軟に考えよう!
感情体験の3要素のうち、思考に焦点を当てます。いつも同じパターンの考えにはまって動けなくさせる思考のモンスターについて学びます。そして、モンスターのわなから抜け出す練習をします。併せて、困った状況から抜け出すための問題解決技法についても学びます。
モジュール6:感情体験に気づこう!
未来や過去ではなく、今ここに注意を向けて観察する「今ここモード」と、ありのままを思いやりを持って受け入れる「そのままモード」について学びます。そして、強い感情を感じている時に、この2つのモードを使う練習をします。
モジュール7:感情曝露に取り組もう!
ここまで学んできたスキルについて振り返ります。これらのスキルを総動員し、不快な感情によって、本当はやりたいのにできなくなっていることに段階的に向き合っていきます。そして、恐れていることが本当に起こるのか、起こった場合にできることはないか、体験的に学んでいきます。
モジュール8:前進し続けよう!
治療を通して学んだスキルと達成したことについて振り返ります。また、今後の課題について検討し、将来に向けた計画を立てます。UP-Aを通して学んだスキルを、治療が終わっても使い続け、なりたい自分に向かって前進し続けることが重要です。
親用モジュール:親ができること
子どもが強い感情を体験していると、親も少なからずその影響を受け、感情的に反応してしまうことがあります。また、子どものためを思っての行動が、意図せず逆効果となっていることもあります。このモジュールでは、子どもが強い感情に対処するのを親が手助けする際に効果的な方法について学びます。



書籍
ジル・エレンリッチ-メイ他(著)、藤里紘子・堀越勝(監訳) 10代のための感情を味方につけるプログラム ワークブック(つらい感情とうまくつきあう認知行動療法の統一プロトコル) 福村出版、2021年刊行

一覧へ戻る

pagetop