主なプロジェクト
精神症へのリカバリーを目指す集団認知療法の実施可能性の検討
2025-09-26
研修指導部
精神症へのリカバリーを目指す集団認知療法の実施可能性の検討
はじめに
このページは現在当センターにて実施中の「精神症へのリカバリーを目指す集団認知療法(集団CT-R)の実施可能性の検討」研究について皆さんに知っていただき、ひとりでも多くの方に集団CT-Rや本研究へ興味を持っていただくことを目的として作成いたしました。本研究は現在参加してくださる方を募集しています。このページをご覧になって研究参加に興味を持たれた方は、ページ下部の問い合わせ先から担当者までご連絡ください。
研究の概要
精神症とは統合失調症、統合失調感情障害、妄想性障害などを含みます。精神症の方の中には、長期間入院を余儀なくされたり、入退院をくりかえしたりされる方もいらっしゃいます。
治療への諦めや「自分には何もできない」という考え方が強くなると、ご自分の望む生活から遠ざかってしまうことがわかってきており、その人がその人らしく望む人生を送るためのプロセス(リカバリー)の重要性が注目されるようになってきました。
そのような背景の中で、認知療法の開発者であるA. Beck博士と、彼の仲間であるP. Grant博士らによってリカバリーを目指す認知療法(CT-R:Recovery-oriented Cognitive Therapy)が開発されました。CT-Rでは、一緒に活動をしたり、自分らしくいられる時間を増やすことにより、ポジティブな考え方をはぐくみます。そして、その人が人生に心から望むこと(アスピレーション)をともに見つけ、その実現に向けて活動することでリカバリーを促進することを目指します。本研究は、集団で実施するCT-Rのプログラムを開発し、その実施可能性を検証することを目的としています。
CT-Rは個別治療としても行われますが、集団療法ではより多くの人に治療を届けることができる、参加者同士の交流を通じてより自己理解が深まり、お互いにサポートしあうことができる、といった利点が期待されます。そこで、我々は集団CT-Rのマニュアルを基に、日本語版の集団CT-Rプログラムを開発しました。
このような方を対象としています。
1)精神症(DSM-5という診断基準で統合失調スペクトラム症及び他の精神症群と医師の診断を受けている方)で国立精神・神経医療研究センター病院精神科に通院中の方
2)担当医師から本研究参加に承諾が得られた方
3)年齢が18歳以上65歳以下の方
4)本研究の目的、内容を理解し、自由意思による研究参加の同意を文書で得られる方
著しく精神症状が不安定な方など、担当医師や研究の担当スタッフが研究に参加することが難しいと判断した場合には、研究への参加をお断り、もしくは中止させていただくこともありますので、あらかじめご了承ください。
本研究で実施する治療について
当センターで開発した集団CT-Rのプログラムを受けていただきます。プログラムは週1回、1回90分、全12回実施されます。1クールの参加人数は5~10名です。治療は以下に示す5つの段階(フェーズ)に分けられます。フェーズに応じて、グループ内で色々な活動や課題に取り組みます。本プログラムでは、様々な活動を通して、心地よいと感じられる気持ちや、前向きになれる考えが増え、あなたの人生における希望や願望(アスピレーション)に向かっていくことを目標としています。
段階 (フェーズ) 内容 | 内容 |
---|---|
フェーズ1 | ポジティブな感情や考えを引き出す活動を行い、人とのつながりを作り、自分らしい瞬間を増やす |
フェーズ2 | 1人1人の希望・願望(アスピレーション)の同定を行う |
フェーズ3 | アスピレーションの実現のために、行うことを細かい段階に分けて、取り組む |
フェーズ4 | アスピレーションの実現のため、課題に取り組む |
フェーズ5 | 自分自身に対するポジティブな考えを強化し、ストレスがたまった時でも自分自身で立て直す力をつける |
また、研究期間中、症状などの把握のためにプログラム前、直後、3か月後などに数回来院していただきます。
研究機関
研究代表機関:
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター
共同研究機関:
信貴山病院ハートランドしぎさん
岡山大学
こころのクリニックOASIS
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター
共同研究機関:
信貴山病院ハートランドしぎさん
岡山大学
こころのクリニックOASIS
研究資金
令和6~8年度 国立精神・神経医療研究センター精神・神経疾患研究開発費(6-2) 「認知行動療法と社会機能改善に資する包括的研究」
令和6~7年度 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究「効果的かつ有効性の高い集団精神療法の施行と普及および効果検証のための研究」
令和6~7年度 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究「効果的かつ有効性の高い集団精神療法の施行と普及および効果検証のための研究」
問い合わせ先
研究について問い合わせをご希望の方は、下記の連絡先までお願いいたします。
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター
研究責任者 三田村康衣 TEL:042-341-2711
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター
研究責任者 三田村康衣 TEL:042-341-2711
参考文献
Beck, A. T., Grant, P., Inverso E. (2021). Recovery-Oriented Cognitive Therapy for Serious Mental Health Conditions. Guilford Press.
Grant, P. M., Bredemeier, K., & Beck, A. T. (2017). Six-Month Follow-Up of Recovery-Oriented Cognitive Therapy for Low-Functioning Individuals With Schizophrenia. Psychiatr Serv, 68(10), 997-1002. https://doi.org/10.1176/appi.ps.201600413
Grant, P. M., Huh, G. A., Perivoliotis, D., Stolar, N. M., & Beck, A. T. (2012). Randomized trial to evaluate the
Grant, P. M., Bredemeier, K., & Beck, A. T. (2017). Six-Month Follow-Up of Recovery-Oriented Cognitive Therapy for Low-Functioning Individuals With Schizophrenia. Psychiatr Serv, 68(10), 997-1002. https://doi.org/10.1176/appi.ps.201600413
Grant, P. M., Huh, G. A., Perivoliotis, D., Stolar, N. M., & Beck, A. T. (2012). Randomized trial to evaluate the
efficacy of cognitive therapy for low-functioning patients with schizophrenia. Archives of general psychiatry, 69(2), 121–127. https://doi.org/10.1001/archgenpsychiatry.2011.129