子どもを妊娠出産することが幸せだなんて、どこのだれが決めたのでしょう。
生物としての普遍性?親族からの圧力?それともなんとなくできちゃった?
妊娠出産にまつわる物語はなんだかパステルカラーで、ひとまず「おめでとう」が先立ち、「本当のこと」が押し隠されて しまっています。つわりで吐いたすえた匂い、夫の体臭、みるみる変化していく体型、そもそもこの子はだれの子なのか。職場の上司には妊娠のこと告げてない。
妊娠出産はサバイバルです。しかもそれがサバイバルだなんて妊娠するまで誰も教えてくれていません。ああ、なんて恐ろしいことなんでしょう。
でも、だいじょうぶ。なぜって、「幸せでハッピーな妊娠生活」なんて単なる幻想なのですから。幻想なのだから、目の当 りにしたら幻滅したって当然のこと。隣の芝は青い。SNSにあげられていることばかりが真実ではありません。「逃げるは恥だ が役に立つ」。腹の中で育っていく子どもや、隣で寝そべる不埒な夫、「こんなはずじゃなかった私の人生」、逃げられない から腹も立つし、めそめそもします。
でも、きっと、大方、そんなもんなのです。
追いつめられていると感じるのは、だいじょうぶ、あなただけではありません。
(文:小林なほか)