妊娠が成立しても出産に至らない状態の総称として“不育症”という言葉があります。
その中で、妊娠22週より前に妊娠が終わることをすべて流産と呼びます。すべての妊娠の約15%を占め、2回以上連続するケースはすべての妊娠の約5%です。流産の原因のほとんどは赤ちゃん側の染色体の異常などによるものですが、親側に原因があることもあります。流産を繰り返すようなら、原因について専門の医療機関で精密検査を受け、適切な説明と治療を受けることをお勧めします。検査をしても原因が突き止められない場合も少なくなく、例えば、2回連続して流産を繰り返した人の中で原因を特定できなかった人は25%ほどになります。
赤ちゃんを希望しながら妊娠が流産に終われば、精神的にダメージを受けます。繰り返せばなおさらです。不妊症で苦しむ人と同じようなつらさに加え、自分のお腹の中で赤ちゃんを育てられないという自責感や再び流産するのではないかという不安感を感じたりします。しかし、親側に原因が見つかったカップルでも6年ほど追跡していくと8割以上の女性が出産した、という海外のデータがあります。すなわち、出産まで多少時間がかかるが、最終的に赤ちゃんを得られる確率は決して低くないということです。赤ちゃんと出会うまでの時間、生活の様々な場面でつらい気分になることは少なくないかもしれません。うつ病や不安症にかかる割合も通常より高いのです。しかし、妊娠を控えていると赤ちゃんへのお薬の影響を考えると薬物療法は控えたいと考える人は多いです。認知行動療法などの精神療法をおおいに活用して、赤ちゃんとの出会いまでさわやかな気持ちで過ごせるように、周囲の人と協力して工夫しましょう。さらに、赤ちゃんが絶対得られるとは限らないという現実にも目を向けられる余裕があればなおさらよいでしょう。赤ちゃんと出会わないまま生活するとした場合の人生設計についても、怖がらずに思いをはせてみましょう。
(文:中野有美)