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周産期のメンタルヘルス

もうひとつの不安~出生前診断

高齢出産のお母さんや赤ちゃんのきょうだいに生まれつきの病気などがあった場合、生まれてくる赤ちゃんの健康について不安を感じる方も多いと思います。
染色体異常の赤ちゃんはお母さんの年齢と関係があることがわかっています。ダウン症(21番染色体異常)ですと、25歳で1383人に1人の確率だったのが、30歳ごろから少しずつ増え始め、40歳になると約84人に1人、43歳で約37人に1人の確率になるといわれています。
以前はおなかに針を刺す羊水検査が行われていましたが、流産の危険性もあるとのことで、2013年からより安全で簡便な、お母さんの採血による染色体異常の可能性を知るための検査(新型出生前診断:NIPT)が行われるようになりました。検査開始より5年間で58,000人が出生前診断を受け、陽性と判定されたのは1038人です。
この検査を受けられるのは、日本産科婦人科学会の指針により以下の条件を満たす方で、妊娠10週以降に受けられます。

  • 前のお子様に染色体の数の変化があった方
  • NIPT以外の非確定的検査(母体血清マーカー検査や妊娠初期コンバインド検査)で染色体疾患の可能性が示唆された方
  • 超音波検査で染色体疾患を疑う所見がある方
  • 高年齢の方
  • 13トリソミー(染色体)、18トリソミー、21トリソミーについて心配の強い方

もし陽性だったら・・・

新型出生前診断で陽性となったら、羊水検査などの確定検査を受けることとなります。羊水検査は通常妊娠15~16週で行われ、結果が出るまでに2~3週間かかります。障害を抱えた子どもを育てていくのか、陽性ではあるが奇跡を信じるか、産まない選択をするのか。 もし人口中絶を選択する場合は22週未満までですので、短い期間で決断を迫られることになります。医学的な情報、育児に関する情報が足りなければ福祉の情報など、子どもにかかわる皆が繰り返し十分に話し合っていくことが必要になります。そのためにも遺伝カウンセリングを受けることが大前提となります。これは厳しい現実と向き合わなければならない、とても苦しい過程であるといえます。実際には、過去5年間で陽性と判定された1038人のうち729人が人口中絶を選択しています。
苦しい決断をした方の中には、“安心”が欲しいという軽い気持ちで受けなければよかった、という声もあり、だからこそ検査を受けなかった、という方もいます。産む決断をしたとしても産むまでが不安ばかりで赤ちゃんに申し訳なかったと言っていた方もいました。
検査を受ける前も、受けた後も、そして決断した後も、お母さんが孤独にならないように、まわりに助けを求めながらじっくり考えていってほしいと思います。

(文:松田陽子)

パパとママが医師から出生前診断の説明を受けている絵

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