妊娠すると「子どもが無事生まれてくれるかな」、「陣痛って、どのくらい痛いのかな」、「急に帝王切開になったらどうしよう」など、不安になることがいっぱいありますよね。そして、同じような悩みを抱えている女性もきっといるのではないでしょうか。 さて、ここでは出産後のトラウマについて紹介します。
出産という体験は、喜ばしい側面を持つと同時に、早産や分娩障害などによって、子どもが新生児集中治療室(NICU)に入院する場合には、母親に強い不安や抑うつ状態などの心理的不健康な状態を特に起こしやすいと言われています(Reid, 2000)。
約3分の1の女性が出産をストレスフルな体験ととらえ(Creedy et al, 2000)、10~15%の女性は分娩時に自分もしくは赤ちゃんが亡くなるのではないかという恐怖を感じていることが報告されています(Lyons, 1998)
震災や事件、事故の後に生じる病気として心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder : PTSD)があります。
これは、命の危険を感じたり、強烈なショック体験、自分ではどうしようもない圧倒的な強い力に支配されたりといった、強いストレスが心のダメージとなり、時間が経過した後でも、その経験に対して強い恐怖を感じることが続き、日常生活に支障をきたすような状態です。
出産時に予想外の怖い体験をした後にはPTSDになることもあります。PTSDは出産後の女性の4%で起こると報告されています (Cook et al, 2018)。
もし、産後の心の傷を克服できないからといって、自分を責めないでください。とても怖い思いをしたあなたにとって、PTSDは自然な反応ともいえるのです。
抱え込んでしまわないよう家族や信頼できる友人に話を聞いてもらったり、同じ出産経験のある人に相談するというのも一つの方法です。
怖い出来事を経験した場合、誰でもショックを受けますし、動揺します。それを誰にも話せず、自分を押し殺してしまうとPTSDを発症してしまうのです。もし怖い出来事を体験した時には、自分の心の変化に寄り添い、周囲を頼ってみましょう。「話す」という行為一つでもPTSDは十分予防できます。どうか、1人で我慢しないでくださいね。
(文:片柳章子)